・パウロ・コエーリョ「アルケミスト 夢を旅した少年」との出会い
YAMAPの創業者・代表の春山慶彦さんが紹介されていた記憶があり、ずっと読みたいと思っていた「アルケミスト」を、無印良品の中でも本の品揃えが豊富な店舗で見つけた。たしか「旅」や「宇宙」のゾーンにあって、多和田葉子の「地球にちりばめられて」や「エベレスト 命・祈り・挑戦」という大判絵本とあわせて手に取り、さらに無印文庫から「星野道夫」をまとめて大人買いした日だった。2ヶ月くらい経ってようやく少しづつ読み始め、半分から後は一気に読み切ったので、興奮冷めやらぬうちに記録を残したいと思う。

羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。(あらすじより)
主人公サンチャゴが何かを成し遂げようとするとき(個人的には終盤の2つの場面を思い浮かべている)、思わず目頭が熱くなった。何かを本気で欲したときに宇宙の全てが味方をしてくれるという感覚、それは凡人には容易に共感できるものではないが、サンチャゴほどに何かに熱心になって、前兆を逃さず、自分の心の声を聞くという域に到達した者だけがそんな感覚を手にするのだろう。ここで思い浮かべるのはやはりYAMAPの春山さんだ。人生で為すべきことを見つけて、熱心に取り組まれてきた経緯を様々なメディアで語られている姿を拝見してきたが、サンチャゴのように彼だけの宝物を見失わずにやってこられたと思うと、この現代において、この人は本当に貴重な存在だ。

砂漠の中のオアシス
この小説には何一つ無駄な言葉が無い。読み終えてそう感じた後に、あとがきで著者の経歴を知ったが、作家になる前は作詞家だったというのだからなるほどと思った。流れる言葉の心地よさ、切実さ、雄大さ。ラテンアメリカ文学に精通しているわけではないが、あらゆる事象が関連して次々と好転していく展開には現実離れした幻想的な空気も感じた(これが”マジック・リアリズム”か)。最近は国内のものを読むことが多かったので舞台のスケールやテーマの大きさに圧倒されつつも、その普遍的なメッセージに勇気付けられ、心が熱くなった。いま自分の働き方、ひいては生き方を変えようと動いている最中であり、そんな折に巡り合わせたように読むことができて嬉しい。ちなみに、アルケミストと言えばと教わったACIDMANの「アルケミスト」を聞いた感想は、「その場面を歌にするのか!」。確かに風を通り越して話していたもんなぁ。
以上のように、これから、本の感想をカジュアルにお伝えしていきます。
言わずもがな「登山や旅」と「読書」の相性は最高です。登山や旅行には空白時間が必ず発生します。山小屋で夕飯を待っているとき。電車での移動中。飛行機で異国の地に向かう途中。私は長時間外に出るとき、本を読むしかない環境に身を置けることにいつも幸福を感じます。自宅やカフェで読むのも良いけれど、旅先に向かうという気持ちの昂りを感じながら読書に没頭する贅沢な時間…。書いていて、本を読むために遠出をしたくなってきました(実際にそういう気持ちを発端にして遠くに目的地をつくって出かけることがありました)。そういえば、イギリス人の錬金術師は本ばかり読んでいて肝心なことを行動に移すのが遅かったですね。行動とセットで本を読むという意味でも、旅や登山に読書を是非とも掛け合わせていただきたいものです。
・【次回】思い出したように筒井康隆「旅のラゴス」の続きを読む
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